激しい大学受験競争はほとんどなかった

2011-06-24

自我心理学の発達理論では、「自我をしっかりさせる」ことがいちばん大事なことになる。そのため、いろいろな困難や悩みに直面したときは、周囲が手を貸さず自分の力で乗り切っていくべきだという立場を取っている。ちなみに、この理論の影響をモロに受けたのが、アメリカである。アメリカ社会では、幼児のころから「自律」ということをたたき込まれる。たとえば、三歳くらいになると個室を与えて、泣こうがわめこうが、一人で寝かせる。日本人の母親は、ヨチヨチ歩きの子どもが転ぶとすぐにかけよって、抱き上げてやるが、アメリカ人の母親は、自分の力で起き上がるのをじっと待っている。また、アメリカでは思春期には親に反抗するのが当たり前と考え、反抗期がない子どもをむしろ心配する親たちが多い。悩んでいるときは、そのまま悩ませておく。目標を外から与えずに、自分で目標を見つけさせる。だからアメリカでは、思春期には日本のような激しい大学受験競争はほとんどなかったし(現在は多少は厳しくなっている)、親もあれこれ口出ししない。一見、すばらしいことに見えるかもしれないが、実はそうでもないということは、三章で説明しよう。ともかく、「人に頼るのはよくない」「自分の力で困難を乗り越えて一人前の大人になる」という自我心理学の理論をアメリカ社会は支持し、実際の教育にも適用しているのだ。ところが、フロイト流の自我心理学を、「どうもちがうんじゃないか」と批判する人たちが出てきた。