「中国語がからっきしできなくて悪かったな」と毒づきたくもなるが、事実だからしかたなかった。僕にしても、中国を歩くたびに、少しは勉強しようと思うのだが、五十歳をすぎた年齢と、東京での忙しい日々がそれを許してくれないのだと……まあ、これはいい訳なのである。かくして僕はセコい中国人と丁々発止の交渉を英語でつづけ、それを聞くH君は、さらに不安が募るというのが、中国を歩きはじめた頃の僕らのスタンスだった。途中から、このおじさんはたいしたことないな、と悟ったのか、彼が突然、中国語を口にしはじめ、旅はずいぶん楽になった。
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自分の不勉強を棚にあげていうわけではないが、それなら早くから話してほしかった。遠慮というものは、もっとしっかりとしたおじさんの前で発揮してこそ意味があるものだと、彼は今回の旅でわかったのではないかと思う。僕は身をもって旅人のいい加減さを演じてしまったようだった。