あまりの刑の重さにただ唖然とした。だれもが、自分個人より家族のことを考えたにちがいない。重い足どりで囚人護送車に乗り、刑務所に帰る。翌日弁護士が上告のためのサインを取りに来たが、期待も持たなかった。それより、自分の体と三十人の共同生活をどう維持してゆくかに頭を使う。研修生から何か勉強しようと申し出があり、私は午前の二時間程を水産資源関係のデータの解析方法を講義することにした。午後は私か日本語を教え、彼らから英語をならった。考えることが単純であったそれまでの日に比べて、語学の勉強と講義の時は実に充実した時が過ぎ、時には夜になっても研修生と話し続けられた。タバコを吸わなかった私はタイ大使館から差し入れのタバコを吸い始め、今だにやめられなくなった発端はこの時である。