煎餅という和菓子名が冠されているが、洋菓子のようなまろやかな味わいとパリッとした歯ごたえが魅力的なのが「瓦せんべい」である。伝統的な神戸名産として、市内の約二五店舗で製造され全国的に認知されている。その姿・形は六〜一〇センチ程度の瓦形正方形が一般的で、丸い板の上で特有のカーブを作り、仕上げに焼き印を入れる。神戸に名を残した戦国武将や家紋などの刻印が入れられることが多いが、昭和初期創業の福進堂総本店では、会社のロゴや学校の校章などのオーダーメイドも受け付けている。では、瓦せんべいという名前はどこから来たのだろうか。いくつもの逸話が残っているのも、この煎餅の魅力のひとつである。戦国時代、手柄を立てた武将に紋印を入れた瓦を授け、その瓦の数で恩賞を与えたという風習にあやかったという説、洋菓子職人だった考案者の趣味が瓦の収集であったからという説などがあるが、興味深いのは、一一〇〇年頃の源平の時代の武将の名前に由来しているという説である。舞台は兵庫県生田。ふたりだけで平家陣営に挑んだ源氏方の兄弟かおり、その名を河原太郎・次郎といった。一族の名声を世に伝えようとひとりで戦いに向かった兄と、ひとりだけでは行かせまいと追随した弟。最終的に討ち死にしたものの、たったふたりで敵陣に飛び込んだ勇気と兄弟愛を称え、のちに三宮神社にはこらが奉られることとなった。その誉れ高き「河原」兄弟の姓にあやかって「瓦」せんべいが誕生し、神戸名物となったというエピソードである。
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